教科書
『就学支援』・『学籍』『教科書』は異なる業務として標準職務表例に挙げられていますが、「就学保障」という共通する目的があります。この3業務はセットで読んでいただきたいです。
「就学」とは学校に入って教育を受けることです。「就学保障」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。子どもが学校に入って教育を受けることを保障するということです。子どもが豊かな教育を受けることができるようにすることが、学校の役割であり、学校教職員共通の役割であり、学校事務職員の役割でもありますが、いくら豊かな教育を用意しても、その教育を受けることができない子どもがいたら、その子どもにとっては、受けた教育はゼロということになります。したがって、就学を保障するということは、豊かな教育を提供する以前の段階のことであると言えます。
『教科書』業務とは、教科書を子どもに用意してあげることです。4月の年度初めの大事な業務の1つです。子どもの数の把握が必要なので、入学や転出入が関係する『学籍』と重なる業務です。文科省が用意してくれているエクセルの教科書システム、学校事務職員なら誰でも知っている、重くて、すぐに壊れる使いにくいシステムを、小まめに何度も保存しながら慎重に操作して、各書類やデータを作る必要があります。教科書配給業者とやりとりもしなければなりません。適正に教科書を配付することは、子どもが学校で豊かな教育を受けるための前提であることから、重要な業務であると言えます。
ただし、言うまでもないことですが、教科書さえ配付できていれば良いという訳では全くありません。象徴的に『教科書』が挙げられているだけで、当然のことですが、たとえば机も椅子も用意しなければなりません。ドリルなどの副読本も、用意されない子どもがいて良い訳がありません。ギガスクール構想が進んだ現在は、タブレットパソコンも教科書と同じように各児童生徒に適正に用意されていなければならないと言えるでしょう。鉛筆や消しゴムのように、各家庭で用意してもらう物品であったとしても、全家庭が用意できるだけの時間的余裕を持って周知したり説明したりできていなければ、「就学保障」の観点からは業務を効果的に回せていないということになると思います。学校の全ての子どもが、学校で豊かな教育を受けられるように、教科書だけでなく、様々な物品や教材など「学習できる環境」を整備することが、就学保障の観点からは求められていると思います。これらは『財務』や『教育活動支援』の業務とも言えます。
教科書システムを使わないといけない業務としては、転出する児童生徒に教科書証明を発行する業務があります。これも『学籍』と重なる業務です。
学校運営業務の多くは学校事務職員だけで回すわけではありません。『教科書』業務も、教員に関わってもらうことで効果的に回るという面があります。多くのが学校で教科書を運ぶのには、教員だけでなく子どもにも手伝ってもらったりして、人海戦術を採っているのではないでしょうか。逆に、教員が教科書システムを操作したり、教科書配給会社とやりとりしたりしている学校があるという話を聞いたことがあります。仕組みを理解し慣れれば学校事務職員でなくてもできるとは思いますが、業務を取り仕切る学校事務職員としては、やり方を教員に説明したりする必要があり、効率という意味では学校事務職員がさっさとやる方が、学校としての効率化が図れるように思います。学校事務職員の事務負担が少ないだけでなく、教員の事務負担も少なくできる「効率化」を、学校運営業務を取り仕切る学校事務職員は考えなければならないと思います。